字幕ほにゃく犬のダラダラほにゃく日記

字幕ほにゃく犬の日常をぐだぐだと書いています

映画「否定と肯定」

 昨日は午後から映画「否定と肯定」を観てきた@TOHOシネマズシャンテ。すっごく面白かった…!

 

hitei-koutei.com

 

 内容を書くこと自体がネタバレになりそうなのであまり書かないほうがよさそう。ナチスによるホロコーストはなかった、ユダヤ人たちはガス室で殺害されたのではなく、チフスなどで死亡したという、いわゆる「ホロコースト否定論」をアーヴィングという歴史学者が提唱していた。ユダヤ系アメリカ人の学者デボラ・リップシュタットはそれを看過できずに批判する。するとアーヴィングがリップシュタットを名誉棄損で訴えるという手段に出る。それもアメリカではなくイギリスで。イギリスの司法制度では、訴えられた側(つまり被告)に立証責任があるという。リップシュタットはイギリスで敏腕弁護士を雇い、アーヴィングのホロコースト否定論の矛盾を突くべく奮闘する…

 

 …というお話。実話をベースにしているため、観ていて怒りがこみ上げる。ネットの情報によると、映画は尺の関係上かなりエピソードを削っているそうだけど、実際のアーヴィングはもっとえげつなかったらしい。

 

 映画を見ていて、様々なことを思い出した。たとえば我が国の「マルコポーロ事件(

マルコポーロ事件 - Wikipedia)」。これは私もよく覚えている。今回の「否定と肯定」でもドイツ語を理解しないのにホロコーストを否定するアーヴィングに対して弁護士が皮肉るセリフがあったけれど、「マルコポーロ事件」でも思った。「なかった」と否定する前にドイツ語の一次資料に当たるべきではないかと。また、日本の歴史問題でも、いろいろと議論がなされている。

 

 110分がまったく長く感じられず、最初から終わりまでずっと緊迫した状態が続く。セリフもものすごーく多く、法廷シーンが多いがゆえに言葉も難しい。なのにまったくストレスを感じることなく字幕を追えた。さすがとしか言いようがない(字幕は寺尾次郎さん。すばらしかった…!)。

 

 パンフレットももちろん購入。憲法学者の木村草太さんが寄稿しておられ、それが面白かった。全部引用するわけにはいかないので1点だけ。

「この映画は、メディアによる「両論併記」に大きな問題があることを示唆している。」

確かに、双方の主張を「平等に」載せることは大切かもしれない。だけど、数多くの歴史学者が長い時をかけて膨大な資料を丹念に分析し導き出してきた結論を、アーヴィング説のような差別意識に基づく暴論と併記すると、それを見た(読んだ)一般の人間は、それが対等な意見だと受け止めてしまう。ましてや、アーヴィングのように口が達者でテレビ慣れしている人物だと影響力も大きい。まさに映像の力を悪用した例なのだろう。それを考えると、この作品のタイトルも原題どおり「否定」だけでもよかったのかも。ホロコーストは、 事実か否かを検証するようなレベルのものではないのだから。

  …と、いろいろ考えながら帰路についた。夕暮れの日比谷はぴゅ~っと風が吹いて寒かった~~💦💦

 

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 パンフレットの表紙をうさ子が押さえてくれている。やっぱりうさ子を連れ帰ってよかったと思える瞬間(笑)。

 

 

 

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 昨日の朝、チェックバック(原稿の直し)をお送りしてOKをいただき、今年の作業が終了した…。ああ、今年は何年かぶりで「お年玉」のないお正月だ…(涙)。お年玉とは、年をまたぐお仕事のこと。ほかの翻訳者さんは忙しそうだなぁ… 年末にヒマなのは私だけだろうか…という、フリーランスならではの不安に駆られつつ、珍しく大掃除の真似事でもしてみっか、などと思ってみたりする。いや、いいチャンスだから撮りためた映画やDVDの鑑賞三昧にするぞ!

 

 ビオラ10日目。色が濃くなった気もするけれど、花びらがくたびれてきた感もある。10日目だもんなー。よく頑張ってるビオラちゃんである。 

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